障 害 年 金 の 話

― 20歳を迎える皆さんとそのご家族のために ―
 
 

おわりに    

 

 親御さんの一番の心配は、今も昔も「親なき後」だと思います。

 そのため親は、今生きているうちにできるだけのことをしておかないと手遅れになる、とあせります。

 

 「今できること」として思いつくのは、一つは生活していくためのスキルを少しでも身につけさせること。

 2つ目は仕事をして稼げるようにすることです。

 

 そのためにご家族の方は涙ぐましい努力をされるのですが、なかなか思うようにいきません。

 やっと会社に雇われても、不況になれば真先に解雇されますし、十分な給料はなかなかもらえません。

 それよりも、心配の余りついスパルタになってしまって、本人が一層萎縮してしまい、持っている力すら思うように発揮できなくなることも珍しくありません。

 

 知的障がいの方の変化はとてもゆっくりですし、限界もあるでしょう。焦ったからどうなるというものではないのです。

 親御さんの方もそれは分かっているのですが、あせりと不安はなかなか抑えられません。

 でも、ここで少し発想を転換してみてはどうでしょうか。

 

 親御さんは無意識に、「ここまで到達しないと生きていけない」という水準を想定しておられるような気がします。

 しかし、実はそのようなものはありません。

 昔ならいざ知らず、今は足りない分を補う方法が色々あるのです。

 

 例えばグループホーム、ホームヘルパー、障害年金、生活保護・・・。

 障害年金を受給された方やご家族の中で、「もらった年金は貯金します」とおっしゃる方が少なくありません。

 

 やはり親なき後を心配されてのことだと思いますが、親なき後、もし他に収入が無ければ、少々の貯金を残されても生活費に充てればすぐに無くなってしまいます。

 結局、生活保護の開始を少し遅らせるだけのことです。

 障がい者の生活保障が自己責任で叶うはずがありません。

 

 それよりも、これからの生活経験を広げより充実させるために、障害年金を有効利用することを考えるべきではないでしょうか。

 制度にまだまだ課題が多いとはいえ、以前に比べると格段にメニューも支給量も増えました(もちろん政治任せではまだまだ楽観できませんが)。

 地域で一人暮らしする知的障がいの方も珍しくなくなりました。

 

 今はむしろ施設に入ることの方が難しいと言っても良いでしょう。

 やや現実離れして聞こえるかも知れませんが、20歳になったら親の子育ては卒業。

 

 これからは障がいのある方ご自身が自分で歩き始める番です。

 障害基礎年金というのは、その門出を祝し、これからの道中を共にしてくれる伴走者のようなものだと思います。

 障害年金請求が、知的障がいの方ご本人だけでなく、親御さんにとっても、自立を考えるきっかけになることを願っています。

 

2023年2月23日  吉村 明夫 

 

     
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