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『お母さん、ありがとう』
投稿日:2022年02月01日
これはホームで暮らす大好きなお酒を毎日嗜まれている普段は飄々とした利用者さんのお話です。
昨年10月、利用者さんのご兄弟から、お母様がお亡くなりになられたとの一報を受けました。お通夜や葬儀についてもご本人が不安定になることを心配されたご兄弟が参列を見送るように検討され、改めてご連絡をいただくまでは伏せておいてほしいとのことからご本人へ何も知らせないまま1ヶ月余りが経過しました。
そして、年の瀬が間近に迫る頃、こちらからご本人への報告について、ご兄弟へご相談させていただいたところ、「今ある兄の安定した暮らしが崩れることが心配なため、このまま知らせないでおこうと考えている」とのお話がありました。しかし、ご本人の気持ちを思うとどうしても報告してあげたいというこちらの意向を汲んでいただき、詳細をお伝えしないことを条件にご報告の承諾をいただきました。
12月30日、事前に大切な話があることをお伝えし、お母様の逝去についてご報告しました。
「えっ、死んだ!?いつ!?」
予期せぬ訃報に驚きを隠せない様子でしたが、ご本人から唯一、
「新型コロナウイルス!?」
と尋ねられたため、「新型コロナではありません」とお伝えしたところ、
「10月○日にお母さん亡くなったんや」
「84歳まで長生きできたんや」
「お母さんは老衰で亡くなったんや。肺炎でもコロナでもなく老衰やねん」
「19年前までは僕もお父さんとお母さんも一緒に家で住んでたんやで」
「長生きしたなぁ。僕も同じくらい生きなあかんから頑張る」
「ありがとう。僕は泣かへん。迷惑かけたらあかんからな」
目に涙を浮かべるご本人が口にされる言葉一つ一つは、まるで天国に旅立った母と久しぶりの会話をされているかのように今までの母への感謝の気持ちと楽しかった思い出を思い浮かべられているようでした。
その後、お伝えした当日と翌日は何度も同じように話をされることがありましたが、年始を迎えた途端、口になれることはなくなり、普段通り穏やかに過ごされています。
そうした様子から気持ちを整え、前向きに進もうとされる逞しい姿が伺えました。
今回の出来事で、利用者のみなさんの“嬉しい”だけでなく“悲しい”にも向き合い、寄り添う大切さを改めて感じ、みなさんそれぞれが離れて暮らすご家族への大切な想いを心に秘めて毎日過ごされていることに気付かせてくれました。